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欧米の学校生活は、日本に比べて「ゆとり」がある、とよく言われています。スウェーデンの学校生活においても、同じ事が言えるような気がします。
日本の高校との違いについて、いろいろな観点から考察していきたいと思います。



1.休日の日数に関しての考察。

スウェーデンの高校は、完全週休二日制です。主な休暇としては、11月初め、2月末、4月初めにある1週間程度ずつある連休、12月末の2週間程度のクリスマス休暇、6月初めから8月末までの10週間程度の夏休み、それに加えて数日存在する祝祭日など、休暇だけでも日本より大幅に多いです。
日本で高校生をしている場合、学校生活が毎日の生活の中心のように、大変な量の勉強や体育、人間関係、教科外活動などが、学校を舞台に繰り広げられますが、スウェーデンで高校生をしている場合、学校生活の、生活全体に対する比重が、微妙な感じで、「学校中心の生活」という印象がありません。1週間のうち、学校へ行くのは5日間だけ。しかも、大きな休暇が複数存在します。


2.勉強量についての考察。

スウェーデンの高校生活の中では、日本のような毎学期末ごとに集中してある試験などは存在しませんが、教科ごとに度々試験が行われます。
履修科目に関しては、スウェーデン国語、英語、体育、地理、歴史、選択外国語、選択科目(体育、美術、倫理、史学)など。
スウェーデンの高校の制度の特長ともいえる、各自が選べる履修コースの存在によって、履修する科目は、大きく変わってきます。自分自身、留学中は、社会学コースを選択したため、基本的な履修科目に加えて、たくさん社会学の授業が組まれていました。
履修コースは、経済学コース、自然科学コース、芸能コース、サービス業コース、保健医療コース、電算技術コースなど、多岐にわたっています。
日本と違い、高校の時点から、すでに専門学校化してきているといっても、過言ではないでしょう。大きく、自分の学びたい方面のコースを選んだあと、外国語、芸術、スポーツなどの選択科目などが存在する訳です。
だから、日本のように全く興味のないようなことも、一応勉強しなければならない、といったようなことは極端に少なくなります。
こういった環境のためか、スウェーデンの学生達は、比較的落ち着いて、きちんと勉強するような印象を受けます。宿題などもきちんと出ますし、前述したように、テストも科目ごとにしばしば行われます。
普段の授業の印象としては、やはり生徒達の自立した学習が中心になっているといった雰囲気です。個人個人で、調査学習をし、発表をしたり。。。自習してこなければならないようなことも多いのです。「受け身」の学習ではない、という言葉の通りです。
いずれにせよ、休む時間とのバランスが良いので、ゆとりを持ちつつ、個人の意欲を活かせながら、勉学に励めるといった感じです。
日本のように、自分の意志に基づかないような勉学は、ありえません。
高校までは、大半の生徒達が進学しているようですが、大学ともなると、各自が勉強のための融資を受け、自分で生活費を稼ぎ、自立して、生活と勉強を両立させる、というのが一般的なようです。そんなスウェーデン人達の、勉強に対する熱心さは、大きいモノだと思います。
それもこれも、強制されないゆとりや、勉強する対象を選べる自由などの産物なのでしょう。
一方で、基本的に行われる授業の内容についていけない生徒達も、勿論います。そんな生徒達のために、特別なサポートクラスが設けられているのが普通で、満足に理解ができるような、援助の態勢というのも整えられています。日本ならば、「塾」がその代わりをするのかもしれません。集団の生徒に対して教師が講義をする態勢の場合、必ず「落ちこぼれ」というのが出てきてしまいますが、個人個人の面倒を見てくれるサポートクラスの存在が、大きな助けとなっているようです。
いい成績を取らなければならない、いい学校に行かなければならない、などといった勉強に対するストレスや、激しい競争意識は、日本に比べればはるかに少ないですし、私立や公立なども、大学までほとんど存在しません。
基本的に、押し付けではなく、一人一人に学びたいことを学んでもらう、というのが、ここの教育現場での精神ではないでしょうか。



3.生徒達を観察して。

日本と同様、授業中は話をしていれば、先生に注意をされる。勉強をしたいのならば、真面目に取り組め、という精神に基づくものでしょう。
それを除いて、彼らは極めて自由奔放にやっているという印象を受けます。
スウェーデンでは、18歳未満は喫煙を禁じられていますが、非常に多くの生徒達は、校舎の外などで、スパスパと、タバコを吸っていたりします。「良くはない」と眉をひそめつつも、それを注意する人もいないというのも、周りの大人たちが、彼らの意思に任せているからなのでしょう。
日本同様、「ungdom(20歳以下の若者。特に、高校生あたりを指す。)」の存在というのは、手を焼く世代のように思われているようです。恋愛、おしゃれ、酒、タバコ、夜遊びなど、高校生達の欲求も、どこの国も変わらない感じですが、それなりに、彼らは欲求を満たすことが出来ているようです。自分で責任を取れる限り、何をやっても良い、というのが回りの大人達の考えなのかもしれません。
女の子達は、スタイルを保持するのには、ほぼ全員が気を遣っている。野菜が、ほとんど輸入で、種類も日本に比べて全然少ないというのに、ベジタリアンの子もたくさんいます。総じて思えることですが、スウェーデン人というのは、食欲の少なすぎる民族だと思います。。。
ただ、スウェーデン人全体に言えることですが、彼らは、とても甘いものが大好きで、授業の合間などには、たくさんの生徒達が、学校のカフェテリアで「Fika(フィーカ。“ティータイム”のようなもの。)」をしています。日本人にとっては、気持ち悪いと思えるようなお菓子を食べたり、あめを口に突っ込んでいたり。。。
話はそれましたが、思春期の彼らなりに、スタイルを気にしたり、風貌に気を遣うなど、いろいろしていることもあるのでしょうが、基本的には、お互い鷹揚な雰囲気で、特別ブランド物で着飾る人などいませんし、格好も、一年の大半は、暗い色のブルゾンをいつでも羽織っているような感じで、性格的にも、皆のんびりしている。いろいろ、「見かけ」に関して気にしなければならない、なんてことに関しては、日本ほど厳しくはないようです。
スウェーデンの高校生達を観察していて、日本と同じだったのは、「携帯電話」の存在でした。皆、よくケータイで話すし、メールを打つのにも凝っている。
その他の目立ったことといえば、皆にとって、運転免許をさっさと取ることがステイタスのように感じました。18歳になれば、すぐに運転免許が取れるスウェーデンでは、その年齢に達する前から、運転の練習が始められます。
さて、生徒と教師の関係ですけれど、生徒達は、教師を相手に口論したり、ひどい態度をとったりしますけれど、冷たい関係ではないな、というのが感想です。距離がすごく近い。日本の高校などの方が、今はひどいですが、基本的に、生徒と教師の間に大きな隔たりがあるように思います。また、生徒も無理矢理勉強しているように感じている訳だから、教師は「敵」に近い存在のようにも思うでしょう。
スウェーデンにおいては、基本的に、勉強したくなければしなくても良いのだから、するならばキチンと勉強するのが筋、というのがスウェーデンの教育現場の精神ですから、生徒達もそれをわきまえた、常識的な行動をとっています。



4.学校施設の特徴。

スウェーデンの高校には、クラスの制度はありますが、ホームルーム教室などは存在しません。そのため、空いた時間を過ごすための空間が充実しているように思います。
ここで、まず述べたいのは、この「空き時間」についてです。日本のように、例えば、8時半から50分授業があり、10分間休憩が入り、また50分の授業、10分の休憩、と続いていくのと違い、スウェーデンの高校の時間割は、毎度の授業の長さもまちまち、休み時間もまちまち。選択科目の選択肢が多くあるため、他のクラスメートが、自分とは違う選択科目の授業を受けている間、自分は何も授業がない、といったようなこともあります。
そんな時や、長すぎる昼休みなど、空いた時間「ホールティンマル」の過ごし方は、さまざまです。外に行って、タバコを吸っている生徒達だっています。
しかし、充実した図書館、コンピューター教室、カフェテリアなどで時間を潰す方法もあります。
図書館の存在は、日本の学校の図書室とあまり変わりませんが、そこにインターネットに接続してあるパソコンがあることが、大きな魅力だと思います。生徒達は、メールをチェックしたり、ネットサーフィンをしたり、図書館の数台のパソコンを活用しています。スウェーデンでは、一般的な光景だといえます。
また、授業中でない場合などは、コンピューター教室も開放されており、生徒達のインターネットのできる場所となります。もしくは、レポート作成のために、コンピューターを使用している生徒もいますが、いずれにせよ、パソコンに触れる機会は十分に与えられており、スウェーデンのIT産業の成功の鍵は、青少年達のこうした環境のためかもしれません。
カフェテリアは、食堂ではありません。食堂は、「マートサーレン」といって、特別にあり、生徒達は、ビュッフェスタイル(選択肢は無いと言って良いですが。。。)の給食を各自で皿に盛り分け、テーブルで友達同士で集まって食べる、というスタイルです。この場合、必ずベジタリアンフードが存在します。そして、給食が好みでなく、食べたくない場合は、フィルミョルク(飲むヨーグルトのようなもの)とシリアルを食べれます。フィルミョルクのバーの他に、サラダバー、固いパン(煎餅のような)バー、ドリンクバー(水か、ミルク。)が存在します。
さて、カフェテリアですが、ここは、売店のようなもので、コーヒー、お菓子、果物、サンドウィッチなどが販売されています。食堂での給食はきちんと食べないのに、ここでのお菓子などは良く売れます。スウェーデンの食文化のひとつといえるでしょう、メインディッシュよりもデザート。。。生徒達は、カフェテリアにある無数のテーブルと椅子に友達同士で集まって腰掛け、甘いお菓子と一緒に、おしゃべりに花を咲かせています。
さて、教室ですが、ホワイトボードと、質素な机が無造作に並べられているだけの、簡素なものです。ただ、毎度の授業で違う生徒達が来て、座って、授業を受けて、また出ていく訳ですから、そのための機能しか存在しません。
生徒達には、ロッカーが与えられています。それほど大きくもなく、冬場などは、ダウンコートなどは押し込むしかありませんし、大概の生徒は校内でも羽織っています。。。
体育館などですが、日本とさほど変わらない雰囲気です。生徒達は、体育着などを持って、体育館の棟に行き、そこにある更衣室で着替えをして、授業に臨みます。ただ、スウェーデンでは、体育の授業の後は、必ずシャワーをする習慣なので、更衣室には、必ずシャワーがあります。
さて、大切な玄関ですが、「上履き」の慣習は無いので、皆土足でそのまま入ってきますし、それほど立派な玄関も存在しません。




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